子どもの歯並びは遺伝だけじゃない?口呼吸・舌・姿勢との関係
瑞穂区の歯ならび・こどものお口ノート / 44
おくちポカン・舌・姿勢を、一つの原因に決めつけない。お口の機能と呼吸の困りごとを確認しましょう。
当院の院長は宮澤平(歯学博士・日本矯正歯科学会 認定医)です。院長の経歴・資格を見る
01子どもの歯並びは、遺伝だけで決まるのでしょうか?
遺伝だけで決まるものではありません。歯やあごの大きさ、成長のしかたに加えて、お口の使い方や習慣などが関わります。ただし、生活習慣だけを変えれば歯並びが整うとも言えません。
「親に似ているから何をしても変わらない」「口を開けていたから歯並びが悪くなった」と、一つの理由にまとめないことが大切です。お子さんのお口を診察し、歯の位置、かみ合わせ、成長、呼吸や飲み込み方を分けて確認します。家族の歯並びは参考になりますが、それだけで治療方針を決めることはできません。[1]
口呼吸と歯並びの関連を調べた研究はありますが、関連があることと、一方がもう一方の原因であることは同じではありません。鼻の通りにくさ、顔やあごの形など、複数の条件が重なることも考えます。保護者や本人の努力不足と捉えないでください。
この記事では、家庭で気づきやすい「おくちポカン」「舌の使い方」「姿勢」を、受診の相談につなげる視点で整理します。写真やチェック項目だけで診断するのではなく、困っている場面を言葉にする手助けとしてご利用ください。
02おくちポカンがあれば、必ず口呼吸をしているのですか?
口が開いている様子だけでは、呼吸の経路や原因を確定できません。日中と睡眠中の様子、鼻づまり、唇を閉じるときの負担などを合わせて確認します。
テレビを見ているときだけ開くのか、普段から開いているのか、風邪のときだけなのかによって、相談内容は変わります。一瞬の写真を見て「いつも口呼吸」と決めつけたり、口を閉じられるか何度も試させたりする必要はありません。
口が開く背景には、鼻の通りにくさだけでなく、歯やあごの位置、お口周りの機能などが関わる場合があります。歯科では歯並びや口唇・舌の状態を確認し、鼻やのどの評価が必要な場合には耳鼻咽喉科などへの相談も考えます。歯科の訓練ですべてを解決しようとしないことが重要です。
家庭では「食事中に息がしにくそう」「朝、口が乾くと言う」など、実際に見聞きしたことをメモしておくと役立ちます。お子さん自身が感じている不快感も聞いてみてください。見た目を注意するより、楽に過ごせているかを確かめる姿勢が大切です。
03口呼吸と歯並びには、どのような研究上の関係がありますか?
子どもを調べた観察研究では、口呼吸や口腔習癖と不正咬合の関連が報告されています。ただし、その結果から全員に同じ変化が起こることや、口呼吸を直せば矯正が不要になることまでは言えません。
3,017人の子どもを対象とした研究では、口呼吸やお口の習慣と、不正咬合の評価との関連が検討されました。これは一時点の状態を調べる研究であり、どの習慣が先に始まったか、別の要因がどの程度関わったかを完全に切り分けるものではありません。[2]
また、口呼吸をする子ども401人を調べた研究でも、すべての子どもが同じ特徴のかみ合わせを示すわけではありませんでした。[3]「口が開く子は必ずこの歯並びになる」という説明は、個人差を十分に反映していません。
研究結果は診察で確認する項目を考える助けになりますが、一人ひとりの診断の代わりにはなりません。歯並びへの心配に加え、眠りにくさや鼻づまりがある場合には、その症状自体を相談する意味があります。歯を並べる治療と、呼吸の原因への対応を分けて考えましょう。
04鼻づまりやいびきがあるときは、まず何を相談しますか?
鼻やのどの症状が続く場合は、耳鼻咽喉科や小児科にも相談してください。歯科には、かみ合わせやおくちポカンの様子とともに、すでに受けている診療や薬について伝えます。
鼻が通りにくい状態で「口を閉じなさい」と繰り返しても、お子さんの苦しさを解決できないことがあります。いびきが続く、睡眠中に呼吸が止まるように見える、眠りが気になるといった場合は、歯並びの相談だけで様子を見続けないようにしましょう。[5]
口をテープで塞ぐことや、息苦しいのに鼻呼吸を強制することを、ご家庭の自己判断で行わないでください。鼻の通りや睡眠中の呼吸を確認せずに口を閉じる方法を優先すると、必要な評価が遅れるおそれがあります。
相談の際は、症状がいつから続くか、風邪の時期だけか、日中も鼻が詰まるかを伝えます。睡眠中の様子を記録する場合も、本人の負担にならない範囲にしてください。強い息苦しさなど急な異常がある場合には、通常の歯科予約を待たず医療機関へ相談します。
05舌の位置や飲み込み方は、歯並びと関係しますか?
舌や唇の使い方は、お口の機能や歯並びを評価する際の確認項目です。ただし、舌を一度見ただけで原因と決めたり、特定の位置に押しつければ歯が動くと考えたりしないでください。
歯科では、安静時のお口の様子、食べ物や唾液を飲み込む動き、発音、かみ合わせなどを必要に応じて確認します。前歯に隙間があるため舌が出やすいなど、歯並びと動きが互いに関わる場合もあり、「舌が先か、歯並びが先か」を単純に決められないことがあります。[1]
家庭で気づいたことは、そのまま伝えて構いません。「飲むときに口元に力が入る」「食べるときに唇が閉じにくそう」などの説明で十分です。インターネットの見本と比べて点数をつけたり、舌を器具や指で強く動かしたりする必要はありません。
発達段階、理解のしかた、食べ物の形態などによっても対応は変わります。むせや飲み込みにくさが続く場合は、歯並びだけの問題として扱わず、症状に応じた医療相談につなげます。「正しい形に見せること」より、無理なく機能しているかを確認しましょう。
06姿勢を良くすれば、歯並びも自然に整いますか?
姿勢を整えるだけで歯並びが治るとは言えません。食事や日常生活で楽に体を支えられる環境は大切ですが、矯正治療の代わりとして効果を約束できるものではありません。
呼吸と頭の姿勢を調べた研究には、8〜11歳の59人を比較し、鼻呼吸と口呼吸のグループ間で頭の姿勢に差を認めなかったものもあります。[4]研究の条件はさまざまで、「猫背が歯並びの原因」「背筋を伸ばせば出っ歯が治る」と断定する根拠にはなりません。
家庭では、机や椅子が体に合っているか、食事中に無理な姿勢になっていないかなど、過ごしやすさを見直します。長時間同じ姿勢を強いるより、痛みや疲れがないかを本人に聞くことが大切です。姿勢が崩れる理由を、気合いやしつけだけで説明しないようにしましょう。
姿勢の困りごとと歯並びの相談は、それぞれ必要な評価を受けます。痛みや運動の問題がある場合も、歯科の訓練で治そうとせず、適切な医療機関へ相談してください。歯並びへの不安から、市販の器具や強い力を加える方法を試すことは避けましょう。
07MFTは、どのお子さんにも必要な訓練ですか?
全員に必要なものではありません。MFTは口腔筋機能療法と呼ばれ、評価に基づいてお口周りの機能に取り組む方法です。目的と適応を確認し、お子さんに合う内容を選びます。
当院では、おくちポカンなどのお口の機能の相談や、MFTに関する診療を行います。訓練の名前だけで選ぶのではなく、何を改善したいか、家庭でどのように取り組むか、いつ変化を確認するかを共有することが大切です。
MFTだけで、あごの骨格やすべての歯の位置を変えられるわけではありません。矯正装置による治療が必要な場合や、鼻の通りなど別の評価を先に行う場合もあります。期待できることと難しいことを分けて説明を受けましょう。
日本小児歯科学会の2026年の案内でも、口腔機能発達不全症の治療は「食べる・話す」などの機能を育てるものであり、歯列矯正と同じ治療ではないことが示されています。機能と歯並び、それぞれの目的を確認して相談することが大切です。[6]
訓練は、強いほど効果が出るものではありません。痛みや疲れ、息苦しさが出る方法を続けず、担当者に相談します。動画の回数をそのまま真似するより、本人が理解して無理なく行える内容を確認してください。できない日が続く場合も、責めるのではなく内容や時間帯を見直します。
08家庭では、どんなことを観察して伝えると役立ちますか?
お口が開く場面、鼻や睡眠の症状、食べるときの困りごとを、分かる範囲で伝えてください。ずっと観察したり、正常かどうかを家庭で判定したりする必要はありません。
| 場面 | 伝える情報の例 | 避けたい自己判断 |
|---|---|---|
| 日中 | 集中すると口が開く、閉じにくそう | 口が開けば必ず口呼吸と決める |
| 睡眠 | いびき、鼻づまり、呼吸が気になる | 歯並びだけの問題と考える |
| 食事 | 唇を閉じにくい、食べにくさがある | 練習だけで解決しようとする |
| 訓練 | 難しい動き、負担になる時間帯 | 回数や強さを勝手に増やす |
メモは数行でも十分です。毎日問題を探すようになると、親子ともに負担が増えることがあります。診察で必要な情報を確認し、次回までに見ておく点を絞る方法がおすすめです。
また、本人の困りごとと保護者の心配は一致しない場合があります。「口が開いて見えるのが心配」と「鼻が苦しい」は別の情報として、どちらも大切にしてください。本人が話しやすい言葉を選び、見た目を否定しないことが相談の土台になります。
09家族で気づいたことが違うときは、どう相談すればよいですか?
どちらが正しいかを決めず、それぞれが見た場面を伝えてください。朝と夜、食事中と遊んでいるときなど、状況によって様子が違うこともあります。
たとえば、保護者の一人は「寝ているときに口が開く」と感じ、もう一人は「日中は気にならない」と感じていても矛盾とは限りません。見た時間帯や、鼻づまりがあったかを分けて話すと、診察で確認する手がかりになります。記録を取る場合も、毎日数値を測るような負担を増やす必要はありません。
家庭で意見が分かれたときは、本人の前で原因を言い合ったり、誰の遺伝かと話したりしないようにしましょう。お子さんが見た目を否定されたと感じると、困っていることを話しにくくなる場合があります。「楽に息をして食べられているかを知りたい」という目的を共有すると、相談内容を整理しやすくなります。
受診後には、医科で確認すること、歯科で経過を見ること、家庭で取り組むことを分けてメモします。説明を受けた人だけが抱え込まず、必要な範囲で養育者にも共有してください。新しい症状が出たり、訓練に負担を感じたりした場合の連絡先も確認しておくと、自己判断で方法を変えずに相談できます。
10口の習慣が気になったら、矯正をすぐ始めることになりますか?
相談した日に必ず矯正を始めるわけではありません。診察で状態を確認し、経過観察、機能への対応、矯正治療などの必要性を考えます。
当院の小児矯正・Ⅰ期治療では、成長やかみ合わせに応じて治療方針を検討します。バイオネーター、拡大床、子どものインハウスアライナーにはそれぞれ適応と限界があり、装置名から先に決めるものではありません。お口の機能への対応が装置の代わりになるとは限らず、併せて検討する場合もあります。
矯正治療には痛みや違和感、清掃の難しさなどがあり、通院や装置管理への協力が必要です。早く相談することは、早く装置を使い始めることと同じではありません。治療する場合と待つ場合の理由を聞き、本人の生活に合わせて考えましょう。
瑞穂区でおくちポカンや歯並びが気になる方は、小児歯科や矯正歯科でご相談ください。遺伝か習慣かを一つに決めるより、今のお口と呼吸の困りごとを確認することから始めます。
当院の院長について
瑞穂みやざわ矯正歯科こども歯科 院長
宮澤 平
歯学博士
日本矯正歯科学会 認定医
経歴
- 愛知学院大学歯学部 卒業
- 昭和医科大学 歯科矯正学講座 入局
- 昭和医科大学 大学院 歯学研究科 歯学博士号 取得
- 昭和医科大学 歯科矯正学講座 勤務・助教(歯科)
- 日本矯正歯科学会 認定医 取得
- 昭和医科大学 歯科矯正学講座 非常勤
所属学会
日本矯正歯科学会・日本小児歯科学会・日本顎変形症学会・日本口蓋裂学会・日本舌側矯正歯科学会
院長情報は医院公式サイトの掲載情報に基づきます。
参考文献・根拠資料
学会・公的機関の資料や学術論文を参照しています。本文の番号から対応する資料を確認できます。